福王寺琉華 幸せの布 紅型展
2010/5/20~2010/5/26 11:00~18:00 日祝休
初日14:00~ 最終日~13:00
このたび山脇ギャラリーにて私の初めての個展を開催させていただく運びとなりました。
楽しみでもあり不安でもあり、今気を引き締めて作品作りに取り組んでいます。
紅型って・・
ところで皆様は紅型と言ってすぐにイメージを浮かべることができますか?
女性の方でも紅型と聞いて沖縄の染め物とだれもが知っているわけではなく、さらにそれが型で染めた王族の衣装でもあったことまで知っている方はそう多くはないでしょう。
「ああ、あの派手な柄の染め物ね。」と言われたりします。そう聞くたびに“本当の古琉球紅型は派手と一言で表わされるものなどではない華麗な色と柄の衣装なのに”と心の中でつぶやいたりしています。
古琉球紅型は琉球王国が海の向こうの国々から優れたデザインを吸収、アレンジ、再構成したものも多く王族にふさわしい華麗さと南国のおおらかさを持ち合わせたものだと感じています。そして私はそのような華麗な衣装で、見る方着る方に感動と喜び、幸せを感じていただけるよう心がけて作品を制作しています。
どうして・・
「どのようなきっかけでこの道にはいりましたか?」と聞かれることがありますが、始まりは主婦の趣味からでした。娘が幼稚園に入園すると昼間少し自分の時間ができるので何かしたいと思って近所の地区センターに買物がてら娘の手をひいて寄ってみたのです。
たまたま行ったその日に教室をしていた中の一つが紅型でした。私もまだその時には紅型については良く知りませんでしたが気さくな先生が説明して下さり始めることになりました。しかし何かご縁があったのでしょうか、それより何年も前に鎌倉芳太郎先生の染色作品集にひかれるものを感じて手に入れていたのですから。
素敵で真摯な先生の下で楽しく趣味として作品を作っているうちに染色の事をもっと知りたくなり武蔵野美術短期大学のプロダクトデザイン科に通信教育で在籍しスクーリングを受けながらテキスタイルを学びました。そして次の目標が娘の成人式の振袖でした。もうお一人の素晴らしい先生のご指導の下で古琉球紅型の格調の高さそしてその作り手としての心構えなどを学びながら振袖を完成させました。このように、趣味で始まった紅型が私の世界をどんどん広げてくれて深めることの楽しさも教えてくれました。
伝統工芸が・・
日本には地方々々に染織だけでなく陶芸・漆芸・金工・木工等さまざまな伝統工芸があり紅型もその一つです。この多種多様な工芸品は政治的に日本が安定していた江戸時代に各藩が威信をかけて藩で奨励、育成したことでさまざまに発展し今に脈々と引き継がれています。しかし今色々な伝統工芸が存続の危機にあるのを感じます。時代の進歩、生活様式の変化により必要性が減少していることはもちろん挙げられますが、世界の中でも貴重な日本の財産であるこの多様な伝統工芸に今一度人々の目が向けられないものかと心を痛めます。
伝統工芸の作品を作る為にはそれを作る為に欠かせない道具がたくさんありますがそれらを作る人たちがいなくなっています。良い仕事をするには良い道具が必要で、良い道具を作る人と良い材料が必要です。
遠い将来に、今の時代これからの時代の作品を手にとって「良い仕事してますね~。」と言ってもらえるように残していくためには、今何とかしなければ、と大きな危機感を感じています。日本の伝統工芸は絶滅危惧種なのではないでしょうか。
紅型の制作者として末席にやっとひっかかっておりますような私がこのような話をして何が変わるとも思いませんが、日頃の思い、そして伝統工芸に携わる方々の声なき思いを少し書かせていただきました。
世界に誇れる日本の工芸の素晴らしい魅力に興味を持っていただければ幸いです。
結びに代えて・・
今回個展を開催するにあたり今までを振り返りますと一つのことを長く続けてこられたありがたさを大変感じます。いろいろな制約を受けながらもその時々のペースで紅型を励みにしながら時を過ごすことができたのは幸せなことです。
そして今回皆様に幸せを感じていただける作品になっているでしょうか、ご高覧をよろしくお願いします。
ではギャラリーでお会いするのを楽しみにしています。
福王寺琉華